塩害とは、海に近い地域で、海水の塩分が原因となって、自動車、電線、コンクリート、鉄製工作物などが被害を受けることを指します。
塩害の起こる範囲は、海岸線のすぐ近くだけには限りません。海水の塩分が、風に乗ってかなり内陸まで広がります。
地域によって塩害の範囲の規定は異なるのですが、海岸から数キロ内陸まで、塩害地域と規定されている地域もあります。
太陽光発電に関して言えば、金属部分の腐食や錆が、塩害として挙げられます。
太陽光発電機器の部品は、太陽光パネル(ガラス、鉄、その他金属)、パワーコンデイショナー(鉄、銅)、接続箱(鉄)、架台(鉄)、電気配線(銅)から構成されており、鉄製品を多数含んでいますので、塩害を受ける危険はとても大きいのです。
◆太陽光発電は塩害地域では設置できない?
塩害地域は、海岸線からの距離によって規定されています。
海岸線から500mまでが重塩害地域。500mから数キロまでが塩害地域です。
例えば、北海道や東北の日本海側では、海岸線から7キロまでの範囲が塩害地域に指定されています。
塩害地域に太陽光発電を設置しようとする場合、無条件には設置できません。
かならず、塩害対策を行なう必要があります。
発電機器のうち、接続箱やパワーコンデイショナー、架台は鉄製ですから、塩で腐食し、錆びる素材です。
ですから、塩害のない一般の地域に設置するのと同じ仕様で、塩害対策を施さずに、太陽光発電を設置してしまうと、腐食や錆で、機器の寿命はとても短くなってしまうのです。
しかし最近では、塩害対策技術が進歩しており、塩害地域でも太陽光発電の設置は可能になっています。
◆塩害対策や設置基準はメーカーごとに異なる
塩害地域は、国土全体の面積からみれば、ごく僅かな狭い地域です。
したがって、その限られた地域のために、塩害地域対応の特別仕様太陽光発電システムを開発しても、メーカーは利益を出せないのです。
ですから、メーカーによっては、塩害地域では設置できないという業者もあります。経営的な合理性からみるならば、当然の考え方とも言えます。
しかし、塩害地域は切り捨て、対応はしないという態度を鮮明にすれば、企業イメージの悪化は避けられません。そうなってしまえば、太陽光発電以外の家電まで売れなくなる危険があります。その危険を回避するために、メーカーは、積極的にではないとしても、塩害地域での太陽光発電設置を検討してくれます。
◆塩害対策で導入コストは高くなる
究極の塩害対策は、電気機器を必ず屋内に設置し、潮風に晒さないとこです。
しかし、太陽光発電は陽光を浴びなければ始まりません。太陽光パネルや架台は屋外に設置する必要があり、屋内設置は不可能です。
太陽光発電機器の、鉄製部品の塩害対策としては、亜鉛めっきする、塗装をする、ステンレス製部品に交換する、プラスチック製品に交換する、などが考えられます。実際上は、コスト的な優位性から、亜鉛めっきが採用されます。
電気部品に使用されている、ボルトナットや ビスも、当然ですが塩害対策が必要です。細かい部分であっても、塩害対策に抜かりがあれば、そこから腐食、錆が進行して、機器全体の寿命を縮めてしまうのです。
◆塩害地域で太陽光発電を設置する場合に注意する点は
塩害地域での設置実績を有する設置業者や、太陽光パネルメーカーなどの専門家に、しっかり相談することが大切です。
一口に、塩害地域と言っても、太陽光発電設置は、一件一件、それぞれ条件が異なります。
海岸線からの距離や、地形、風向、風速、標高や、風を防ぐ防風林や森の有無など、様々な要因で条件は違ってきます。
専門家に相談して、設置する箇所に、もっとも適した塩害対策を行いましょう。
また、塩害の影響は、日常のメンテナンスによっても低減することが可能です。
こまめに機器の清掃を行い、機器に付着した塩分をしっかり洗い流すことが、対策として重要です。
◆塩害地域での設置事例を参考に
一番確かなのは、塩害地域で実際に設置された太陽光発電設置の、実績と途中経過、現状を確認することです。
ところが、残念なことに、情報がありません。
憶測になってしまいますが、塩害地域での太陽光発電設置実績が極めて少ないということなのかもしれません。
おそらく、設置コスト、メンテナンスの煩雑さ、寿命の短さなどを考えると、塩害地域に実際に設置することには踏み出し難いのかもしれません。
もっとも、これはあくまで推測にすぎません。
ですので、実際に塩害地域に太陽光発電を設置しようとされる方は、メーカーや設置業者の情報をしっかり収集し、専門家とよく相談した上で、設置すべきかどうかを判断されるといいでしょう。